「相続法はどう変わった?」「どう対応すればいい?」

事例・報告

「相続法はどう変わった?」「どう対応すればいい?」

2023/06/14 事例・報告

「相続法が変わった・相続法が変わると聞いた、どう対応すればいいか」というような相談が増えています。今回はこの問題を考えてみます。なお、不動産登記、税制の改正もありますが、その部分は、司法書士、税理士の分野ですので、ここでは触れません。

 

▶ 相続法のどこが変わったか、どこが変わるか

相続法の分野は(も)このところ法改正が進んでいます。

既に変わったところとしては、(代表的なところでは)、配偶者居住権の新設、遺留分制度の改正、遺産分割協議における主張制限、所在不明者がいる場合の相続財産管理制度、土地の国庫帰属です。法改正が終わって今後施行されるのは、相続登記と住所変更登記の義務化です。

 

▶ 自筆証書遺言の改正

平成31年1月13日以降に作成される自筆証書遺言では財産目録を自筆する必要がなくなりました。遺言書保管制度も令和2年7月10日から始まっています。

 

▶ 遺留分制度の改正

令和元年7月1日以降の死亡に適用されます(遺言書の作成日ではありません)。改正前は、個々の遺産について遺留分の限度で権利が移転する(例えば、遺留分が8分の1だとすると、不動産の持分が8分の1移転し、共有になる)とされていましたが、改正後は、遺留分侵害額の限度で金銭請求できる(前例では、不動産の価値の8分の1を金銭請求する)となりました。「不動産を全部相続させる」こと自体は遺留分の請求があっても変更されないということです。

 

▶ 配偶者居住権

夫と妻が居住していた夫名義の建物について、夫が死亡した場合に妻に(一時または終身)居住権を認める制度です。令和2年4月1日以降の死亡に適用されます。

この制度については、配偶者居住権が発生した場合の建物評価額などいくつかの問題がありますが、ここでは省略します。

 

▶ 遺産分割協議における主張制限

相続開始(被相続人の死亡)から10年を経過すると、遺産分割にあたって、特別受益(ある相続人は被相続人から贈与を受けていたなど)、寄与分(ある相続人が被相続人の遺産の増加、維持に特別の寄与をした)ことを主張することができなくなります。これは、令和5年4月1日から施行されています。この改正は過去の相続にもさかのぼって適用されるので注意が必要です(経過措置あり)。

遺産分割協議自体に期限はありませんが、10年経過により、上記のような主張ができなくなりますので、遺産分割協議を促進する効果が期待されています。

まだ、施行直後で実例はこれからですが、往々にして、実家の土地家屋が父の所有、父が死亡した後、相続登記をせず、母が死亡してから子どもの間で遺産相続の話し合いを始める、ということがあります。父が死亡してから10年を経過していると、父の遺産相続については、特別受益、寄与分の主張ができなくなるというようなことが起きそうです。

 

 

▶ 所在不明者がいる場合の相続財産管理制度

これも令和5年4月1日から施行されています。従来の相続財産管理制度は、「人単位」となっており、その人の相続財産全体について管理することになっていましたが、今回の改正で「物単位」で財産管理人を選任することができるようになりました。ある不動産について相続人の所在が不明なために売却などができないというような場合に、その不動産についての管理人を選任することができるようになったのです。

 

▶ 土地の国庫帰属

令和5年4月27日から施行されています。一定の条件を満たす場合に、土地の所有権を国に帰属させる制度です。建物は含まれないので要注意。

 

▶ 最後に

いくつか説明しましたが、結構複雑です。弁護士も、これまでの常識が通用しないので、事案ごとに調査しながら間違いない対応に努めています。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 


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