相続登記の義務化

事例・報告

相続登記の義務化

2024/03/12 事例・報告

続登記の義務化(令和641日から)

令和641日から、相続により取得した不動産について登記が義務化されました。その主な内容は、以下のとおりです。

1 義務の内容

 

相続により自分が不動産を取得したことを知った日から3年が過ぎても、正当な理由なく登記の申請をしていない場合、法務局から登記を「催告」されます。その催告にも応じず登記をしない場合、10万円以下の過料が課されます。

 

 

2 過去に相続した不動産にも適用

相続登記の義務化は、令和641日よりも前に相続したけれど相続登記はまだ行っていない不動産にも適用されます。

ただし、このような場合、令和93月末日まで猶予期間がありますので、それまでに相続登記を行えば、過料が課されることはありません。

3 相続で揉めていて登記ができない場合

通常の相続登記とは別に、相続が始まったことと自分が相続人であることの届出をして登記することもできます(相続人申告登記)。他の相続人の同意は必要なく、自分1人で手続きができます。

自分は相続登記をしたいけれど、他の相続人との遺産分割協議が揉めているため、相続登記ができないという場合もあるでしょう。このような場合でも、この相続人申告登記を3年以内に行えば、相続登記の義務が履行されたことになり、過料が課されることはありません。

 

4 DVの被害者など住所を知られたくない場合

相続登記をすると、不動産登記には、所有者となった人の氏名だけでなく住所も記載されます。この情報は公開ですので、誰でも見ることができます。しかし、DVの被害者など自分の住所を知られたくないという人もいるでしょう。

このような場合、不動産登記の際に申し出れば、現住所の代わりに当事者と連絡がとれる弁護士事務所や被害者支援団体、法務局の所在地を住所として記載できるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ご不明な点などありましたら、当事務所まで遠慮なくお問い合わせください。

 

 


遺言能力とは

2023/12/12 事例・報告

遺言は,自分の意思に沿って遺産を分けたい,将来,遺産を巡って相続人が揉めるのを避けたい,などの希望を叶えることができるなど,多くのメリットがあります。

もっとも,遺言について,遺言者の死後,その有効性を巡って相続人間で紛争になることがあり,その場合は却って紛争が発生する可能性もあります。

そこで,有効な遺言を作成するためにはどのようにしたら良いでしょうか。

実務上最も多く争われるのは,「遺言能力の有無」です。遺言能力とは,「遺言内容及びその法律効果を理解判断するのに必要な能力」を指します。要するに、遺言の内容を十分に理解できるだけの判断能力のことになります。

典型的には認知症を抱える高齢者の遺言で「遺言能力」が問題になりやすいです。

過去の裁判例では,遺言の内容,遺言者の年齢,病状を含む心身の状況及び健康状態とその推移,発病時と遺言時の時間的間隔,遺言時とその前後の言動及び健康状態,日頃の遺言についての意向,遺言者の受遺者の関係,前の遺言の有無,前の遺言を変更する動機・事情の有無等遺言者の状況を総合的に見て判断するとされています。

このように様々な考慮要素もあるため,「遺言能力」の有無の判断は専門家でも意見が分かれることも多いです。

その中でも一番重要な要素は,やはり遺言者の判断能力です。そして,その判断能力は,長谷川式スケールやMMSEスケール等の認知症のテストの点数で数値化されます。

非常に大ざっぱに申しますと,長谷川式スケールのテストの結果が

20点以上有効である可能性大

10点台ケースバイケース

10点未満無効である可能性大

という理解がされています。ただし,上記の通り遺言能力の有無は,様々な考慮要素を総合的に考慮して判断されるので,長谷川式スケール等の結果は目安に過ぎず,テストの結果だけで一律に判断することはできません。それでも,実務上はこの点数が非常に重要な考慮要素であることは確かです。

これらの遺言能力の判断基準を踏まえた上,有効な遺言を作成するためには,遺言作成の先立ち,長谷川式スケール等のテストを実施したり,医師の診断書を書いて頂く,遺言内容の聞き取りをする際に動画撮影をするなどの証拠化の作業が重要です。

 

また,公正証書遺言の方法で作成した方が,公証人のチェックが入るため,自筆証書遺言よりも遺言能力が認められやすいと言えます。

 

 

 

 

 

 

以上のように,遺言能力の観点からも有効かつ,それを証拠化した遺言を作成するためにも,遺言作成の際には予め弁護士に相談しておくことをお勧めします。


遺言書作成の必要性

2023/08/04 事例・報告

 

遺言書を作成するメリットは、①遺産の分け方について自分の意思を反映させることができること、②将来の相続トラブルを回避しやすいことになります。

そのため、一定の遺産が見込まれ、一定の相続人が発生する可能性がある場合で、法定相続分通りの分け方ではなく、誰にどの遺産をどのように分けるのか決めたい場合には遺言書を作成することが必要です。

 

例えば、夫である自分が亡くなり、夫婦の間に子どもはおらず、相続人としては妻と、夫の兄弟となる場合に、妻のみに全ての遺産を相続させたい場合は、そのような遺言書を作成することで妻に遺産を相続させ、妻のその後の生活を守ることができます。

 

また、母である自分が亡くなり、夫は既に他界している為、子ども2人(長男と次男)が相続人となっているケースでは、長年の介護をしてくれた長男に遺産を多く分け、次男には一定額を分けたいという場合にも、そのような遺言書を作成することで実現ができます。この場合には、将来の相続で長男と次男の間でトラブルにならないよう、次男には遺留分相当額を分けるようにすることをお勧めします。

 

さらに、法定相続人ではない人、お世話になった福祉団体などに遺産を引き継がせたい場合は、遺言書が必要です。例えば、いわゆる内縁の妻(事実婚の配偶者)は、法定相続人にはなりませんので、遺言書を書いておかないと、財産を引き継がせることができません。

 

 

このように、遺言書の書き方や遺産の評価の仕方には注意点がありますので、遺言書を作成される際には、ぜひ一度ご相談ください。


「相続法はどう変わった?」「どう対応すればいい?」

2023/06/14 事例・報告

「相続法が変わった・相続法が変わると聞いた、どう対応すればいいか」というような相談が増えています。今回はこの問題を考えてみます。なお、不動産登記、税制の改正もありますが、その部分は、司法書士、税理士の分野ですので、ここでは触れません。

 

▶ 相続法のどこが変わったか、どこが変わるか

相続法の分野は(も)このところ法改正が進んでいます。

既に変わったところとしては、(代表的なところでは)、配偶者居住権の新設、遺留分制度の改正、遺産分割協議における主張制限、所在不明者がいる場合の相続財産管理制度、土地の国庫帰属です。法改正が終わって今後施行されるのは、相続登記と住所変更登記の義務化です。

 

▶ 自筆証書遺言の改正

平成31年1月13日以降に作成される自筆証書遺言では財産目録を自筆する必要がなくなりました。遺言書保管制度も令和2年7月10日から始まっています。

 

▶ 遺留分制度の改正

令和元年7月1日以降の死亡に適用されます(遺言書の作成日ではありません)。改正前は、個々の遺産について遺留分の限度で権利が移転する(例えば、遺留分が8分の1だとすると、不動産の持分が8分の1移転し、共有になる)とされていましたが、改正後は、遺留分侵害額の限度で金銭請求できる(前例では、不動産の価値の8分の1を金銭請求する)となりました。「不動産を全部相続させる」こと自体は遺留分の請求があっても変更されないということです。

 

▶ 配偶者居住権

夫と妻が居住していた夫名義の建物について、夫が死亡した場合に妻に(一時または終身)居住権を認める制度です。令和2年4月1日以降の死亡に適用されます。

この制度については、配偶者居住権が発生した場合の建物評価額などいくつかの問題がありますが、ここでは省略します。

 

▶ 遺産分割協議における主張制限

相続開始(被相続人の死亡)から10年を経過すると、遺産分割にあたって、特別受益(ある相続人は被相続人から贈与を受けていたなど)、寄与分(ある相続人が被相続人の遺産の増加、維持に特別の寄与をした)ことを主張することができなくなります。これは、令和5年4月1日から施行されています。この改正は過去の相続にもさかのぼって適用されるので注意が必要です(経過措置あり)。

遺産分割協議自体に期限はありませんが、10年経過により、上記のような主張ができなくなりますので、遺産分割協議を促進する効果が期待されています。

まだ、施行直後で実例はこれからですが、往々にして、実家の土地家屋が父の所有、父が死亡した後、相続登記をせず、母が死亡してから子どもの間で遺産相続の話し合いを始める、ということがあります。父が死亡してから10年を経過していると、父の遺産相続については、特別受益、寄与分の主張ができなくなるというようなことが起きそうです。

 

 

▶ 所在不明者がいる場合の相続財産管理制度

これも令和5年4月1日から施行されています。従来の相続財産管理制度は、「人単位」となっており、その人の相続財産全体について管理することになっていましたが、今回の改正で「物単位」で財産管理人を選任することができるようになりました。ある不動産について相続人の所在が不明なために売却などができないというような場合に、その不動産についての管理人を選任することができるようになったのです。

 

▶ 土地の国庫帰属

令和5年4月27日から施行されています。一定の条件を満たす場合に、土地の所有権を国に帰属させる制度です。建物は含まれないので要注意。

 

▶ 最後に

いくつか説明しましたが、結構複雑です。弁護士も、これまでの常識が通用しないので、事案ごとに調査しながら間違いない対応に努めています。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 


特別受益の持戻し免除の意思表示の推定について

2022/07/01 事例・報告

 

【事案】のAさんは、Bさんの老後生活の安定を考えて今2人で住んでいる自宅をBさんに贈与した後、しばらくして亡くなりました。

Aさんの相続人はBさんとCさんになりますが、遺産分割するときに、Aさんが生前Bさんに贈与した自宅はどのように扱われるのでしょうか。

 

■ 特別受益の持ち戻しとは? ■

AさんからBさんへの自宅の贈与のような、被相続人の生前贈与や遺贈を『特別受益』といい、遺産分割のときには贈与や遺贈された金額を相続財産の中に計算上加えて、具体的な相続分を決めることになります(民法903条第1項)。このことを『特別受益の持戻し』といいます。

(1)「特別受益の持ち戻し」をする場合

BさんとCさんが法定相続分どおり(それぞれ2分の1ずつ)遺産分割を行うことになると、自宅分の金額を相続財産に加えた上で計算し、すでに自宅を貰っているため自宅分の金額を差し引くことになりますので、Bさんは預貯金500万円をもらうことになります。

【計算】 (20,000,000円+30,000,000)÷220,000,000円=5,000,000

 

(2)「特別受益の持ち戻し」をしない場合

被相続人は、『特別受益の持戻し』をしないという意思表示(これを『持戻し免除の意思表示』といいます。)ができるので(民法903条第3項)、Aさんが自宅の金額を含めずに相続分を決めるといった意思表示をしていれば、Bさんは預貯金から1500万円ももらえることになります。

【計算】 30,000,000円÷215,000,000

 

以上のとおり、Aさんが持戻し免除の意思表示をしていなかったかどうかで、Bさんが使えるお金が1000万円も違ってしまいます。

今回の相続法の改正では、この『特別受益の持戻し免除の意思表示』があったものとする推定規定(民法903条第4項)が定められました。

Aさんのように、夫婦の一方が他方に対して居住用不動産の贈与などをする場合、通常それまでの長年の貢献に報いると共に、その老後の生活を保障する趣旨で行われるものと考えられることなどの事情が考慮され、一定の場合に『特別受益の持戻し』が行われる場合の原則と例外が逆転することになりました。

では、どのような場合に推定規定が適用されるのでしょうか。

 

■ 『特別受益の持ち戻し免除の意思表示』の推定規定が適用されるケース ■

それは、次の2つの要件を満たしたときとなります。

(1)婚姻期間が20年以上の夫婦であること

問題となる贈与や遺贈が行われた時点で、法律上の婚姻期間が20年以上となっている必要があります。

同じ人と結婚と離婚を繰り返している場合には通算で20年以上となっていれば大丈夫ですが、事実婚の期間を含めることはできません。

また、たとえば、贈与が行われたのが婚姻期間10年目だった場合、相続開始時点で婚姻期間が20年以上経過していても要件を充たしません。

(2)居住用不動産の贈与又は遺贈がされたこと

対象となる贈与等の目的物は、自宅といった居住用不動産になります。

贈与などが行われた時点で居住用になっている必要がありますが、近い将来居住用にする目的があったと認められる場合には、要件を充たすと判断される可能性があります。

また、居宅兼店舗の不動産を贈与などした場合、その不動産の構造や形態、被相続人の遺言の趣旨等によって判断されます。

 

推定規定が適用されるかどうかは実質をみて判断されることがあり、一概にこうだと言い切れるものではありません。ご自身の場合に適用されるのか、迷った場合には、弁護士にご相談いただけたらと思います。

 


 

特別寄与料について(相続法改正)

2021/10/12 事例・報告

~相続人以外の者の貢献を配慮するための方策~

Q:例えば長男の妻(相続人ではない)が被相続人の療養介護を尽くしてもこれまで認められなかった寄与が、民法改正で寄与料として認められると聞きましたが。

A:その通りです。民法1050条で、被相続人の親族は、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払い(特別寄与料)を請求することが出来ることになりました。実態を考慮したのですね。

 

Q:請求はどうすればよいのですか。
A:まずは、相続人との話し合いですね。話し合いで決まればよいですが、それが難しければ家庭裁判所で解決をすることになります(協議に代わる処分の請求)。家庭裁判所で話し合い、まとまらなければ裁判官に金額を決めてもらうことになります。

 但し、気をつけなければならないのは期限があることです。

 

Q:どんな期限ですか。
A:寄与料を請求する人は、相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月以内に、また相続開始の時(被相続人の死亡時)から1年以内に請求をしなければなりません。

 

Q:請求する相手となる相続人が複数いるときは誰が負担するのですか。
A:条文で、各相続人はそれぞれの相続分に乗じた額を負担すると書かれています。

 

Q:ところで、寄与料の具体的計算はどのようになりますか。
A:療養看護型(被相続人の看護をした)の場合、基本的には、
寄与料=介護日数×介護報酬相当額(1日5,000円~8,000円)×裁量割合(0.7が多い)
という計算式でなされます。

家業従事型(被相続人の事業に従事した)の場合、一般的には、
寄与料=特別寄与者が通常得られたであろう給与額×(1-生活費控除割合0.3~0.5)×寄与期間
という計算式でなされます。

 

 

遺留分制度が変わりました。

2021/08/03 事例・報告

平成30年相続法改正で遺留分制度が変わりました。

 

人は、本来自由に自分の財産を処分することができますので、生前の贈与や遺言状の作成によって、法で定められた相続人と異なる人に自分の財産を相続させることも、特定の相続人に全財産を相続させることもできるはずです。

しかし、民法は、一定の範囲の相続人(配偶者、子、直系尊属)に遺留分を認めて、被相続人による 自由な財産の処分(贈与・遺贈)に一定の制限をしています。

相続制度が、遺族の生活保障や、潜在的持分の精算という機能を有していることを考慮し、また、近親者の相続期待権を保護しているのです(遺留分を主張しないこともまた自由です)。

改正前、遺留分権利者は、遺贈を受けた人や贈与を受けた人に対し、「遺留分減殺請求権」を行使することができましたが、現物返還の原則が基本とされ、また、遺留分権利者の方で減殺の対象となる財産を選ぶことができず、遺産全体について価格の割合に応じて減殺すべきとしていたため、遺留分義務者が価格弁償を選択しない限り、不動産が共有となり、さらに共有物分割の手続きが必要となって、紛争の解決が長期化しがちでした。

改正によって、遺留分権利者は、「遺留分侵害額請求権」をもつことになり、侵害額の支払を請求する方式に変わりました。以前より、格段に請求が容易になったのです。令和元年7月1日以降にお亡くなりになられた方から適用があります。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから、1年で時効により消滅します。相続開始の時から10年の経過によっても消滅します。

ご相談の際には、遺留分侵害額請求権を行使できる期間にご注意頂き、お早めにご相談ください。

 

 

法務局の自筆証書遺言保管制度

2021/06/24 事例・報告

法務局の自筆証書遺言保管制度を知っていますか?

 

自筆証書遺言は、思いたったときにご自分で書くことができますが、その保管に困る方も多いのではないでしょうか。よくあるのは仏壇の中などですが、知らない間に家族が開封してしまったり、紛失・隠匿の心配があります。また、遺言書があると聞いていたけれど、亡くなった後、親族が探し出せないという事態もあります。

さらに、自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所の検認という手続きを受けて、その遺言書が遺言者が書いたものかどうかを確認してもらうのですが、遺言書は開封せずにその手続きを受けなくてはならないというのも大きなハードルでした。

こうした心配ごとを避けるべく、令和2年7月から法務局が自筆証書遺言を保管する制度ができました。

法務局が預かってくれればプライバシーも確保できますし、紛失・隠匿のおそれも避けられます。さらに家庭裁判所での検認が不要となります。

ご自身で遺言書の作成を考えておられる方は、この保管制度の利用を検討されてはいかがでしょうか。

ただし、自筆証書遺言は、形式が決まっており、正しく書かなければ無効とされてしまいます。

そのため、自筆証書遺言書の作成にあたっては、弁護士に相談されることを強くおすすめします。遺言の内容によっては、公証役場で作成する公正証書遺言の方が適切な場合もあります。まずは、お気軽にご相談ください。

 

 

相続法改正Q&A(5) -自筆証書遺言-

2019/07/19 事例・報告

自筆証書遺言の方式緩和とその保管制度の創設について

 

1 自筆証書遺言の方式の緩和は2019年1月13日に,すでに施行されています。
 これまで,自筆証書遺言は,遺言者自身が,全文,日付及び氏名を自筆しなければなりませんでしたが,改正により,相続財産の目録を添付する場合は,自署によらなくてもよいことになりました(ただし,目録1頁ごとに,署名と押印が必要です)。
 目録部分はパソコンで作成できることになり,遺言者の負担が相当に軽減されることになり,自筆証書遺言が,より利用しやすいものになりました。

 

2 自筆証書遺言の保管制度の創設は、2020年7月10日に施行が予定されています。
 現在、自筆証書遺言を作成しても、その遺言書を自分で保管するか信頼できる個人や団体に預けるしかありません。
 しかし、遺言書を紛失する危険もあり、相続発生後、すぐに遺言書が見つからないという事態も生じてしまいます。
 そこで、遺言者は、法務局に自筆証書遺言を保管してもらうことができるようになります。相続発生後、相続人は全国のどの法務局からでも遺言書を探すことができます。
 ただ、公正証書遺言とは異なり、作成自体に公証人などの第三者が関わりません。
 相続発生後の紛争予防手段という点では、差は出てくることに注意が必要です。

 

 

相続法改正Q&A(4) -預金の払い戻しについて-

2019/05/13 事例・報告

今回の相続法の改正では、預金の払い戻しについても、新たに規定がなされました。

Q1 相続が起きた場合、預金の払戻はどうしたらよいでしょうか。相続人であれば、単独で自分の相続分を払い戻せるのでしょうか。

単独では払い戻すことは出来ません。

最高裁の判例により、預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれるとされたため、共同相続人による単独での払戻しが認められないからです。ですので、他の相続人と遺産分割の合意が完了しなければ、払い戻しができません。

 

Q2 それでは、葬儀費用や相続人の生活費の支払い等,当座の資金に困ってしまうのですが。

そのような場合に、今回の改正で仮払いの制度が認められました。

2つの仮払制度があります。

一つは、預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分で行うというやり方です。
 具体的には、家庭裁判所に調停を申し立てて、そこで払戻をお願いをすることになります。

もう一つは、預貯金債権の一定割合について、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口において支払いを受けるやり方です。
 具体的には、A銀行に1200万円の預金がある場合、その3分の1につき、自分の法定相続分の割合で払戻が出来るというものです。

例えば、4分の1の法定相続分を持つ相続人は、1200万円×1/3×1/4=100万円まで払い戻しを受けられることになります。ただ、1つの金融機関では150万円が限度とされています。

 

なお、改正相続法は、原則として2019年7月1日から施行されますが、この払戻は2019年6月30日以前に開始した相続に関し、同年7月1日以降に預貯金債権が行使される場合にも適用があります。

 

 

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